単元に分類できないトピック : 複数単元を含むもの 計算のテクニック

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その場合は、こちらのページをご覧ください。

例題

(1) 二次方程式 $x^{2}-15x+18=0$ の解を求めよ。
(2) ジョーカーを除くひと組のトランプ$52$枚から同時に4枚引くとき、すべて偶数の札である または すべて絵札である確率を求めよ。
ただし、絵札は数字の札とは考えないこととする。
(3) $\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k^{3}+k^{2}+k)$ をΣを使わずに表せ。

アドバイス

数学能力はあるのに、計算間違いがとても多いひとがいる。単純にうっかりミスのこともあるけど、多くの場合、わざわざミスを招くような計算方法をしている。
特に、「とりあえず展開」は絶対にやめよう。数学の計算の基本は、展開ではなく因数分解である。

(1)

お薦めの計算方法

解の公式より、
$x=\displaystyle \frac{15\pm\sqrt{15^{2}-4\cdot 1\cdot 18}}{2}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm\sqrt{(3\cdot 5)^{2}-4\cdot 2\cdot 3^{2}}}{2}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm\sqrt{3^{2}(5^{2}-4\cdot 2)}}{2}$
ルートの中を因数分解した。 $x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm 3\sqrt{25-8}}{2}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm 3\sqrt{17}}{2}$
である。

解答$x=\displaystyle \frac{15\pm 3\sqrt{17}}{2}$

やってはいけない計算方法

解の公式より、
$x=\displaystyle \frac{15\pm\sqrt{15^{2}-4\cdot 1\cdot 18}}{2}$
ルートの中をとりあえず展開するひとは多いけど、とりあえず展開は絶対ダメ $x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm\sqrt{225-72}}{2}$
で、とりあえず展開すると、でかい数になっちゃった。次は引き算するしかないよね。 $x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm\sqrt{153}}{2}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm\sqrt{3^{2}\cdot 17}}{2}$
$153$を$3^{2}$で割った。かけて割るって、無駄だよね。割りきれる数も見つけないといけなくなるし。
面倒なことになった理由は、最初に展開したから。
もう一度言うけど、とりあえず展開は絶対ダメ
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15\pm 3\sqrt{17}}{2}$
である。

解答$x=\displaystyle \frac{15\pm 3\sqrt{17}}{2}$

(2)

偶数の札は、ハート,スペード,ダイヤ,クラブそれぞれに2,4,6,8,10の5枚あるので、全部で$20$枚。
よって、4枚すべて偶数である場合の数は、
${}_{20}\mathrm{C}_{4}$式A
である。

また、絵札は、ハート,スペード,ダイヤ,クラブそれぞれにJ,Q,Kの3枚あるので、全部で$12$枚。
よって、4枚すべて絵札である場合の数は、
${}_{12}\mathrm{C}_{4}$式B
である。

絵札は数字とは考えないので、絵札かつ偶数は存在しない。

全体の場合の数は、$52$枚から$4$枚引くので、
${}_{52}\mathrm{C}_{4}$式C
である。


お薦めの計算方法

式A~Cより、求める確率は
$\displaystyle \frac{{}_{20}\mathrm{C}_{4}+{}_{12}\mathrm{C}_{4}}{{}_{52}\mathrm{C}_{4}}$
$\displaystyle = \frac{ \frac{20 \cdot 19 \cdot 18 \cdot 17}{ \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1}}}} + \frac{12 \cdot 11 \cdot 10 \cdot 9}{ \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1}}}}}{\frac{52 \cdot 51 \cdot 50 \cdot 49}{ \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1}}}}}$
分母分子に$4\cdot 3\cdot 2\cdot 1$をかけた。 $\displaystyle = \frac{\textcolor{red}{\cancelto{\textcolor{cyan}{\cancel{\textcolor{red}{2}}}}{\textcolor{black}{20}}} \cdot 19 \cdot \textcolor{green}{\cancelto{\textcolor{cyan}{\cancelto{3}{\textcolor{green}{6}}}}{\textcolor{black}{18}}} \cdot 17 + \textcolor{green}{\cancelto{\textcolor{cyan}{\cancel{\textcolor{green}{4}}}}{\textcolor{black}{12}}} \cdot 11 \cdot \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{10}}} \cdot 9}{\textcolor{cyan}{\cancelto{13}{\textcolor{black}{52}}} \cdot \textcolor{green}{\cancelto{17}{\textcolor{black}{51}}} \cdot \textcolor{red}{\cancelto{5}{\textcolor{black}{50}}} \cdot 49}$
約分した。分子がたし算になっているので、$+$の前と後、両方約分するのを忘れずに。 $=\displaystyle \frac{19\cdot 3\cdot 17+11\cdot 9}{13\cdot 17\cdot 5\cdot 49}$
$=\displaystyle \frac{3(19\cdot 17+11\cdot 3)}{13\cdot 17\cdot 5\cdot 49}$
共通因数でくくった。これをしておかないと、後の約分の確認が面倒になる。 $=\displaystyle \frac{3\cdot 356}{13\cdot 17\cdot 5\cdot 49}$
分母の4つの数は、いずれも$3$で割り切れない。なので、これ以上約分できないかの確認は、$356$が$13$,$17$,$7$で割れるかを確認するだけで済む。 $=\displaystyle \frac{1068}{54145}$
である。

解答$\displaystyle \frac{1068}{54145}$

やってはいけない計算方法

式Aより、4枚すべて偶数である場合の数は、
${}_{20}\mathrm{C}_{4}$
$\displaystyle =\frac{ \textcolor{green}{\cancelto{5}{\textcolor{black}{20}}} \cdot 19 \cdot \textcolor{red}{\cancelto{3}{\textcolor{black}{18}}} \cdot 17 }{ \textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{4}}} \cdot \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{3 \cdot 2}}} \cdot 1}$
$= \textcolor{red}{5} \cdot 19\cdot 3\cdot 17$式A'
$=4845$
となるので、$4845$通り。
「${}_{20}\mathrm{C}_{4}$通り」よりも、「$4845$通り」の方が何となく分かりやすそうな気がするから、とりあえず計算してみるひとも多いと思う。
でも、とりあえず計算はダメ。特に確率の問題は、必要がない限り部分的にちまちま計算してはいけない。後で面倒なことになりがちだ。
以下の${}_{12}\mathrm{C}_{4}$と${}_{52}\mathrm{C}_{4}$にも同じことが言える。

式Bより、4枚すべて絵札である場合の数は、
${}_{12}\mathrm{C}_{4}$
$\displaystyle = \frac{ \textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{12}}} \cdot 11 \cdot \textcolor{red}{\cancelto{5}{\textcolor{black}{10}}} \cdot 9}{\textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{4 \cdot 3}}} \cdot \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{2}}} \cdot 1}$
$=11\cdot \textcolor{red}{5} \cdot 9$式B'
$=495$
となるので、$495$通り。

式Cより、全体の場合の数は、
${}_{52}\mathrm{C}_{4}$
$\displaystyle =\frac{ \textcolor{cyan}{\cancelto{13}{\textcolor{black}{52}}} \cdot \textcolor{green}{\cancelto{17}{\textcolor{black}{51}}} \cdot \textcolor{red}{\cancelto{25}{\textcolor{black}{50}}} \cdot 49}{ \textcolor{cyan}{\cancel{\textcolor{black}{4}}} \cdot \textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{3}}} \cdot \textcolor{red}{\cancel{\textcolor{black}{2}}} \cdot 1}$
$=13\cdot 17\cdot \textcolor{red}{25} \cdot 49$式C'
$=270725$
となるので、$270725$通り。

以上より、求める確率は
$\displaystyle \frac{4845+495}{270725}$
$=\displaystyle \frac{5340}{270725}$
部分的に計算したから、分母も分子も大きな数の分数ができた。これを約分してゆくわけだけど、分母分子を割りきれる数を探さないといけない。 $=\displaystyle \frac{1068}{54145}$
分母分子を$5$で割ったけど、これって式A'~式C'の赤い部分のことだよね。結局、式A'~式C'で$5$をかけて、同じ$5$で割り算して約分したことになる。時間の無駄だし、無駄な計算は計算間違いのもとになる。また、これ以上約分できないかを確認するのも大変だ。
こんなことになった理由は、${}_{20}\mathrm{C}_{4}$,${}_{12}\mathrm{C}_{4}$,${}_{52}\mathrm{C}_{4}$を先に計算しちゃったから。
もう一度言うけど、必要がない限り部分的にちまちま計算してはいけない
である。

解答$\displaystyle \frac{1068}{54145}$

(3)

お薦めの計算方法

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k^{3}+k^{2}+k)$
$=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^{2}+\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\frac{1}{2}n(n+1)$
$=\displaystyle \frac{1}{4}\{n(n+1)\}^{2}+\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\frac{1}{2}n(n+1)$
$=\displaystyle \frac{3}{12}\{n(n+1)\}^{2}+\frac{2}{12}n(n+1)(2n+1)+\frac{6}{12}n(n+1)$
通分した。 $=\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)\{3n(n+1)+2(2n+1)+6\}$
共通因数でくくった。 $=\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)(3n^{2}+3n+4n+2+6)$
$=\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)(3n^{2}+7n+8)$
となる。

解答$\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)(3n^{2}+7n+8)$

やってはいけない計算方法

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k^{3}+k^{2}+k)$
$=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^{2}+\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\frac{1}{2}n(n+1)$
$=\displaystyle \frac{1}{4}n^{4}+\frac{1}{2}n^{3}+\frac{1}{4}n^{2}+\frac{1}{3}n^{3}+\frac{1}{2}n^{2}+\frac{1}{6}n+\frac{1}{2}n^{2}+\frac{1}{2}n$
とりあえず展開した。でも、とりあえず展開は、後で計算が面倒になるから絶対ダメ $=\displaystyle \frac{1}{4}n^{4}+\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{3}\right)n^{3}+\left(\frac{1}{4}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\right)n^{2}+\left(\frac{1}{6}+\frac{1}{2}\right)n$
$=\displaystyle \frac{1}{4}n^{4}+\frac{5}{6}n^{3}+\frac{5}{4}n^{2}+\frac{2}{3}n$
$=\displaystyle \frac{3}{12}n^{4}+\frac{10}{12}n^{3}+\frac{15}{12}n^{2}+\frac{8}{12}n$
通分した。 $=\displaystyle \frac{1}{12}n(3n^{3}+10n^{2}+15n+8)$
共通因数でくくった。 $=\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)(3n^{2}+7n+8)$
$3n^{3}+10n^{2}+15n+8$の$n$に$-1$を代入すると$0$になるので、$3n^{3}+10n^{2}+15n+8$は$n+1$で割り切れる。
三次式の因数分解をするハメになった理由は、先に展開しちゃったから。
しつこく言うけど、とりあえず展開は絶対ダメ
となる。

解答$\displaystyle \frac{1}{12}n(n+1)(3n^{2}+7n+8)$

アドバイス

「とりあえず展開」とか「とりあえず計算」とかが、後で面倒を引き起こしがちだということが分かってもらえたと思う。
ここに載せた計算は、とりあえず展開すると面倒なものを集めたわけではなくて、ごく普通の式ばかりだ。
多くの受験生にとって、とりあえず展開ってのは何となく分かりやすいような気がするのだろう。一方、上で説明したお薦めの計算方法は取っつきが悪いかも知れない。けれど、意識的にお薦めの計算方法を使って、早く慣れてほしい。
共通テストは時間との戦いである。無駄な計算は時間もかかるし、計算間違いのリスクも高くなる。