数学Ⅰ : 図形と計量 三角形の面積から逆算

例題

三角形の面積から逆算 解説図

各辺の長さがAB=7BC=8CA=9の三角形ABCがある。この三角形の
(1)面積を求めなさい。 (2)頂点Bから辺ACに下ろした垂線の足をHとするとき、線分BHの長さを求めなさい。 (3)sinABCの値を求めなさい。 (4)内接円の半径を求めなさい。 (5)外接円の半径を求めなさい。

アドバイス

センター試験では、三角形の面積から逆算して、辺や角などさまざまな値を求めることがある。ここでは、そのタイプの問題を集めてみた。
というわけで、解説に入る前に三角形の面積の公式を復習しておこう。

復習

三角形の面積から逆算 復習図

図のような三角形ABCの面積をS,内接円の半径をr,外接円の半径をRとするとき、
S=12ah S=12acsinB S=12r(a+b+c) S=abc4R S=s(sa)(sb)(sc)
ただし、s=a+b+c2
(ヘロンの公式)
である。

(1)

三角形の三辺の長さが分かっていて、和が偶数なので、面積を求めるのはヘロンの公式が楽。

s=7+8+92=12 とすると、ヘロンの公式より、三角形ABCの面積S
S=12(127)(128)(129)
S=12543
S=125
である。

解答125

別解

ヘロンの公式を使わない場合は、 1.余弦定理でひとつの角のcosを得る 2.sin2θ+cos2θ=1を用いて、その角のsinを得る 3.復習の2番目の公式を使って面積を求める という手順になる。

余弦定理より、
BC2=AB2+AC22ABACcosBAC
cosBAC=AB2+AC2BC22ABAC
cosBAC=72+9282279
cosBAC=49+(98)(9+8)279
cosBAC=49+17279
cosBAC=66279
cosBAC=1121

sin2BAC+cos2BAC=1より、
sin2BAC+(1121)2=1
sin2BAC=1(1121)2
sin2BAC=212112212
sin2BAC=(2111)(21+11)212
sin2BAC=1032212
sin2BAC=564212
0<sinBACなので、
sinBAC=8215

三角形ABCの面積をSとすると、
S=12ABACsinBAC
S=12798215
S=125
となる。

解答125

(2)

復習の1番目の公式と、(1)で求めた面積を使って逆算する。

三角形ABCの底辺をAC,高さをBHとすると、
S=12ACBH

(1)より、S=125なので、
12ACBH=125
129BH=125
BH=21259
BH=853
である。

解答853

別解

(1)の面積を求めるのに別解の方法を使っていて、sinBACsinBCAが分かっていれば、次のような方法もある。

ABHBHA=90の直角三角形。
よって、
sinBAH=BHAB

(1)の別解より、sinBAH=sinBAC=8215なので、
BHAB=8215
BH7=8215
BH=835
となる。

解答853

(3)

復習の2番目の公式と、(1)で求めた面積を使って逆算する。

三角形ABCの面積をSとすると、
S=12ABBCsinABC

(1)よりS=125なので、
12ABBCsinABC=125
1278sinABC=125
sinABC=12574
sinABC=357
である。

解答357

別解1

(1)の面積を求めるのに別解の方法を使っていて、BACBCAsinが分かっていれば、正弦定理でも求められる。

正弦定理より、
ACsinABC=BCsinBAC

(1)の別解より、sinBAC=8215なので、
ACsinABC=BC8521
9sinABC=88521
8sinABC=98521
sinABC=357
となる。

解答357

別解2

(1)の別解のように、正弦定理からcosABCを求め、sinABCに変換する方法もあるが、ここでは省略する。

(4)

復習の3番目の公式と、(1)で求めた面積を使って逆算する。

三角形ABCの面積をS,内接円の半径をrとすると、
S=12r(AB+BC+CA)

(1)よりS=125なので、
12r(AB+BC+CA)=125
12r(7+8+9)=125
12r=125
r=5
である。

解答5

(5)

復習の4番目の公式と、(1)で求めた面積を使って逆算する。

三角形ABCの面積をS,外接円の半径をRとすると、
S=ABBCCA4R

(1)よりS=125なので、
ABBCCA4R=125
7894R=125
R=7894125
R=7325
分母を有理化して、
R=21510
となる。

解答21510

別解

目的が「面積から逆算する」のため、その方法を先に解説した。
しかし、(3)でsinABCが分かっているので、この別解のように、一般的には正弦定理を用いて解く。

三角形ABCの外接円の半径をRとすると、正弦定理より、
ACsinABC=2R

(3)よりsinABC=357なので、
2R=AC357
2R=9357
R=92357
R=3725
分母を有理化して、
R=21510
である。

解答21510

アドバイス

以上、面積から逆算する方法を中心に説明した。三角形の面積の公式を上手に使えば、簡単な計算で問題が解ける場合があることが分かってもらえたと思う。
特に(4)で解いた内接円の半径は、他に求める方法はない。(内接円の半径が相似な三角形の一辺になっているなど、他の条件があれば別である。しかし、その場合でも求めているのは三角形の一辺であって、それがたまたま内接円の半径と等しいにすぎない。)
なので、復習でまとめた5つの公式はぜひ憶えておいてほしい。