数学Ⅰ : 図形と計量 90n°±θの三角比の値 (1)

例題

次の式の値を求めなさい。

(1) $\sin\theta+\sin(90^{\circ}-\theta)$
          $+\cos(90^{\circ}+\theta)+\cos(180^{\circ}-\theta)$
(2) $\cos(-90^{\circ}+\theta)+\cos(-\theta)$
          $+\sin(180^{\circ}+\theta)+\sin(270^{\circ}-\theta)$

アドバイス

$90^{\circ}$の整数倍$\pm\theta$、例えば$ 90^{\circ}\pm\theta$や$ 180^{\circ}\pm\theta$の三角比は、$\theta$の三角比で表せる。
例題は、ばらばらの角度の三角比を、角度を$\theta$にそろえて計算する問題だ。

私は好きじゃないけど、次のような公式もある。

公式

$\sin(90^{\circ}\pm\theta)=\cos\theta$
$\sin(180^{\circ}\pm\theta)=\mp\sin\theta$
$\cos(90^{\circ}\pm\theta)=\mp\sin\theta$
$\cos(180^{\circ}\pm\theta)=-\cos\theta$
(複合同順)

この公式を暗記しておけば例題は解けるんだけど、先に書いたように、私は好きじゃない。どうせ憶えるのなら、英単語のひとつでも憶えた方がいいと思っています。
で、私のお薦めの方法は、憶えずに済む代わりに理解しなきゃいけない。「理解するより憶えた方がいいや」って人は公式を憶えてもらって、この先は読まなくても大丈夫です。


このページで復習したように、三角比は次のように定義できる。

定義

図A
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図A

座標平面において、原点から、$x$軸から左回りに$\theta$の角度で引いた半直線(図Aの緑の線)と、単位円との交点(赤い点)を考える。
この交点の
$x$座標を$\cos\theta$ $y$座標を$\sin\theta$ とする。

図B
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図B

この定義の表現を少し変えて、図Bにおいて、
青い線の長さを$\sin\theta$ 緑の線の長さを$\cos\theta$ としよう。

図C
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図C

でも、単に長さだと、例えば$\displaystyle \sin\theta=\frac{1}{2}$と$\displaystyle \sin\theta=-\frac{1}{2}$のような、正の値と負の値の区別がつかない。
なので、図Cのように、$x$軸から下向きの長さと$y$軸から左向きの長さは負の値と考えることにしよう。

図D
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図D

例えば図Dのようなとき、
$\sin\theta$は青い線の長さだけど、負の値 $\cos\theta$は緑の線の長さだけど、負の値 と考えることにする。

(1)

問題の式の
$\sin\theta+$$\sin(90^{\circ}-\theta)$
           $+$$\cos(90^{\circ}+\theta)$$+$$\cos(180^{\circ}-\theta)$式A
は角度がばらばらなので、$\theta$にそろえよう。
角度をそろえるのは、公式ではなくてアドバイスの方法を使う。
慣れてくると頭の中で考えられるようになる。でも、はじめは図を描いて見ながら考えよう。
$\theta$の角度は分からないからどんな図を描いてもいいんだけど、$\theta=30^{\circ}$くらいの図を描くと分かりやすい。分かりにくくなるので$\theta=45^{\circ}$付近には描かないように。

図E
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図E

角度を$\theta$にそろえるので、$\theta$の三角比の確認から。
$\sin\theta$は図Eの青い線の長さ $\cos\theta$は図Eの緑の線の長さ だ。

ここまで理解したところで、角度をそろえ始めよう。


図F
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図F

式Aの赤い部分の
$\sin(90^{\circ}-\theta)$
は、アドバイスの考え方から、図Fの赤い長さ。
図Eでこれと同じ長さなのは、緑の線、つまり$\cos\theta$なので、
$\sin(90^{\circ}-\theta)=\cos\theta$式B
とかける。


図G
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図G

式Aの青い部分の
$\cos(90^{\circ}+\theta)$
は、図Gの赤い長さ。
これは$y$軸から左向きの長さなので、負の値だ。
図Eで図Gの赤と同じ長さなのは、青い線、つまり$\sin\theta$だけど、これは正の値。
なので、
$\cos(90^{\circ}+\theta)=-\sin\theta$式C
とかける。


図H
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図H

式Aのオレンジの部分の
$\cos(180^{\circ}-\theta)$
は、図Hの赤い長さ、
これは$y$軸から左向きの長さなので、負の値だ。
図Eで図Hの赤と同じ長さなのは、緑の線、つまり$\cos\theta$だけど、これは正の値。
なので、
$\cos(180^{\circ}-\theta)=-\cos\theta$式D
とかける。


以上の式B,式C,式Dを式Aに代入して、
$\sin\theta+\sin(90^{\circ}-\theta)$
          $+\cos(90^{\circ}+\theta)+\cos(180^{\circ}-\theta)$
$=\sin\theta+\cos\theta-\sin\theta-\cos\theta$
$=0$
である。

解答$0$

(2)

数Ⅰでは負や$180^{\circ}$を超える角度の三角比はやらないけれど、これも(1)と同じように解ける。

$\cos(-90^{\circ}+\theta)$$+$$\cos(-\theta)$
          $+$$\sin(180^{\circ}+\theta)$$+$$\sin(270^{\circ}-\theta)$式E


図I
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図I

式Eの赤い部分の
$\cos(-90^{\circ}+\theta)$
は、図Iの赤い長さ。
図Eでこれと同じ長さなのは、青い線、つまり$\sin\theta$なので、
$\cos(-90^{\circ}+\theta)=\sin\theta$式F
とかける。


図J
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図J

式Eの青い部分の
$\cos(-\theta)$
は、図Jの赤い長さ。
図Eでこれと同じ長さなのは、緑の線、つまり$\cos\theta$なので、
$\cos(-\theta)=\cos\theta$式G
とかける。


図K
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図K

式Eのオレンジの部分の
$\sin(180^{\circ}+\theta)$
は、図Kの赤い長さ。
これは$x$軸から下向きの長さなので、負の値だ。
図Eで図Kの赤と同じ長さなのは、青い線、つまり$\sin\theta$だけど、これは正の値。
なので、
$\sin(180^{\circ}+\theta)=-\sin\theta$式H
とかける。


図L
90n°±θの三角比の値 (1) 解説図L

式Eの緑の部分の
$\sin(270^{\circ}-\theta)$
は、図Lの赤い長さ。
これは$x$軸から下向きの長さなので、負の値だ。
図Eで図Lの赤と同じ長さなのは、緑の線、つまり$\cos\theta$だけど、これは正の値。
なので、
$\sin(270^{\circ}-\theta)=-\cos\theta$式I
とかける。


以上の式F,式G,式H,式Iを式Eに代入して、
$\cos(-90^{\circ}+\theta)+\cos(-\theta)$
          $+\sin(180^{\circ}+\theta)+\sin(270^{\circ}-\theta)$
$=\sin\theta+\cos\theta-\sin\theta-\cos\theta$
$=0$
である。

解答$0$