大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 問題例 記述式を含む 問題例3 [1] 解説
(1)
問題文より、図Aのように、点$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$,$\mathrm{E}'$,$\mathrm{F}'$はそれぞれ点$\mathrm{A}$,$\mathrm{B}$,$\mathrm{C}$,$\mathrm{D}$から出発して、矢印の方向に移動する。
$\mathrm{E}'$,$\mathrm{F}'$は$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$の原点に関して対称な点で、$\mathrm{BF}=2\mathrm{AE}$なので、図中の緑の矢印はオレンジの矢印の$2$倍の長さだ。
ただし、(1)では$\mathrm{E}$,$\mathrm{E}'$の移動は原点でストップする。
(i)
点$\mathrm{E}$が$\displaystyle \left(\frac{5}{3},0\right)$にあるとき、$\mathrm{AE}$は、
$\displaystyle \mathrm{AE}=2-\frac{5}{3}$
$\displaystyle \mathrm{AE}$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。
問題文より$\mathrm{BF}=2\mathrm{AE}$なので、
$\displaystyle \mathrm{BF}=2\cdot\frac{1}{3}$
$\displaystyle \mathrm{BF}$$\displaystyle =\frac{2}{3}$
なので、点$\mathrm{F}$の$y$座標は、
$2+\displaystyle \frac{2}{3}=\frac{8}{3}$
となる。
よって、このとき、四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$は図Bのようになる。
四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$の面積$S$は、ひし形の面積の公式から求めてもいいんだけど、ここでは△$\mathrm{OEF}$の面積を$4$倍する方法で計算する。
図Bより、△$\mathrm{OEF}$(赤い三角形)の面積は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{5}{3}\cdot\frac{8}{3}$
なので、四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$の面積$S$は、その$4$倍の
$S=\displaystyle 4 \times \frac{1}{2}\cdot\frac{5}{3}\cdot\frac{8}{3}$
$S$$\displaystyle =\frac{80}{9}$
である。
解答ア:8, イ:0, ウ:9
(ii)
$\mathrm{AE}=t$
とおくと、
$0\leqq t \lt 2$式A
である。
このとき、
$\mathrm{OE}=2-t$
$\mathrm{OF}=2+2t$
となる。
図Cでは、グラフの下半分は省略。
(i)と同様に、△$\mathrm{OEF}$(図Cの赤い三角形)の面積は
$\displaystyle \frac{1}{2}(2-t)(2+2t)=(2-t)(1+t)$
なので、、四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$の面積$S$は、
$S=4(2-t)(1+t)$式B
と表せる。
式Bは上に凸の放物線の式で、グラフは横軸と$t=-1,2$で交わる。
このことから、式Aを定義域として式Bのグラフを描くと、図Dができる。
図Dより、$S$が最大になるのは、放物線の頂点。
頂点の$t$座標は、$-1$と$2$の中点なので、
$\displaystyle \frac{-1+2}{2}=\frac{1}{2}$
である。
これを式Bに代入して、$S$の最大値は
$S=4\left(2-\frac{1}{2}\right)\left(1+\frac{1}{2}\right)$
$S$$=(4-1)(2+1)$
$S$$=9$
である。
また、図Dより、$S$の最小値は存在しないけど、
$0 \lt S$
であることが分かる。
以上より、$S$の範囲は
$0 \lt S\leqq 9$
である。
解答あ:$0 \lt S\leqq 9$
(2)
まず、正方形$\mathrm{ABCD}$の面積$T$を求めよう。
さっきと同じように、△$\mathrm{OAB}$の面積を$4$倍する方法で計算すると、$T$は
$T=4\displaystyle \times\frac{1}{2}\cdot 2\cdot 2$
$T$$=4\cdot 2$
である。
(2)では、点$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$,$\mathrm{E}'$,$\mathrm{F}'$は(1)と同様に図Aの矢印の向きに動く。
ただし、(1)と違って、点$\mathrm{E}$は原点を通り越して点$\mathrm{C}$まで移動する。
点$\mathrm{E}$が原点上にあるときは考えない。
このとき、(1)のときと同様に
$\mathrm{AE}=t$
とおくと、
$0\leqq t\leqq 4$
だけど、$\mathrm{E}$が原点上にある場合は考えないので、
$t\neq 2$
である。
なので、$t$の定義域は、
$0\leqq t \lt 2$,$2 \lt t\leqq 4$
となる。
$0\leqq t \lt 2$のとき、式Bより、
$S=4(2-t)(1+t)$
である。
このとき、$S=T$だから
$4(2-t)(1+t)=4\cdot 2$
より
$(2-t)(1+t)=2$
$-t^{2}+t+2=2$
$t(-t+1)=0$
なので、
$t=0,1$式C
となる。
この2つの解はともに場合分けの$0\leqq t \lt 2$に含まれる。
$2 \lt t\leqq 4$のときは、点$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$,$\mathrm{E}'$の位置は図Eのようになる。
(グラフの下半分は省略)
よって、
$\mathrm{OE}=t-2$
$\mathrm{OF}=2+2t$
なので、△$\mathrm{OEF}$(図Eの赤い三角形)の面積は、
$\displaystyle \frac{1}{2}(2-t)(2+2t)=(t-2)(1+t)$
なので、、四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$の面積$S$は、
$S=4(t-2)(1+t)$
と表せる。
このとき、$S=T$だから
$4(t-2)(1+t)=4\cdot 2$
より
$(t-2)(1+t)=2$
$t^{2}-t-2=2$
$t^{2}-t-4=0$
なので、解の公式より
$t=\displaystyle \frac{1\pm\sqrt{1^{2}-4\cdot 1\cdot(-4)}}{2\cdot 1}$
$t$$\displaystyle =\frac{1\pm\sqrt{17}}{2}$
となる。
いま、$t$の範囲は$2 \lt t\leqq 4$なので、
$t \displaystyle =\frac{1-\sqrt{17}}{2}$
は不適。
答えは
$t=\displaystyle \frac{1+\sqrt{17}}{2}$式D
のひとつだけだ。
式C,Dより、$S=T$となる$t$は
$t=0$,$1$,$\displaystyle \frac{1+\sqrt{17}}{2}$
だけど、
$t=0$
は、点$\mathrm{E}$は点$\mathrm{A}$と一致するとき。
よって、求める解は
$t=1$,$\displaystyle \frac{1+\sqrt{17}}{2}$
である。
解答エ:1, オ:1, カ:1, キ:7, ク:2
(3)
今度は、点の動きが逆だ。
これまでと同じように
$\mathrm{AE}=t$
とすると、点$\mathrm{E}$の$x$座標は
$2+t$
とかける。
また、$\mathrm{BF}=2t$なので、点$\mathrm{F}$の$y$座標は
$2-2t$
とかける。
$t$の範囲を考えると
$0\leqq t$
だけど、$\mathrm{F}$が原点上にある場合は考えないので、
$2-2t \neq 0$
より
$t\neq 1$
である。
よって、$t$の定義域は、
$0\leqq t \lt 1$,$1 \lt t$
となる。
$0\leqq t \lt 1$のとき、点$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$,$\mathrm{E}'$,$\mathrm{F}'$の位置は図Fのようになる。
このとき$S$は、△$\mathrm{OEF}$(図Fの赤い三角形)の$4$倍なので、
$S=4\displaystyle \cdot\frac{1}{2}(2+t)(2-2t)$
$S$$=-4(t+2)(t-1)$ $(0\leqq t \lt 1)$
とかける。
また、$1 \lt t$のとき、点$\mathrm{E}$,$\mathrm{F}$,$\mathrm{E}'$,$\mathrm{F}'$の位置は図Gのようになる。
このとき$S$は、△$\mathrm{OEF}$(図Gの赤い三角形)の$4$倍なので、
$S=4\displaystyle \cdot\frac{1}{2}(2+t)(2t-2)$
$S$$=4(t+2)(t-1)$ $(1 \lt t)$
とかける。
以上より、$S$は
$S=\left\{\begin{array}{ll}
-4(t+2)(t-1) & (0\leqq t \lt 1)\\
4(t+2)(t-1) & (1 \lt t)
\end{array}\right.$式E
となる。
式Eより、
$0\leqq t \lt 1$のとき、グラフは上に凸の放物線で、$t=-2$,$1$で横軸と交わる。
$1 \lt t$のときのグラフは、$0\leqq t \lt 1$のときのグラフと$x$軸に関して対称だ。
両方の放物線で、軸は$-2$と$1$の中央なので、定義域に入らない。
また、$t=0$のとき、四角形$\mathrm{ABCD}$と四角形$\mathrm{EFE'F'}$は同じ図形なので、
$t=0$のとき、$S=T$である。
以上より式Eのグラフを描くと、図Hができる。
図Hができたところで、選択肢を考えよう。
点$\mathrm{E}$と点$\mathrm{A}$が一致するのは$t=0$のときなので、図Hの黒い点。
黒い点以外の、$S=T$の直線(緑の線)と$S$のグラフの共有点は$1$個。
なので、⓪は誤り。
$S=2T$の直線(オレンジの線)と$S$のグラフの共有点は$1$個。
なので、①は正しい。
$S$のグラフの最大値はない。
なので、②は誤り。
③は$S$についての話ではないので、図Hを使わずに解く。
また、点$\mathrm{E}$と点$\mathrm{A}$が一致する場合以外を問われているので、$t=0$のときは考えない。
四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$が正方形のとき、$\mathrm{OE}=\mathrm{OF}$である。
図Fより、$0 \lt t \lt 1$のときに四角形が正方形にならないのは明らかなので、$1 \lt t$のときだけを考える。
$1 \lt t$のとき、図Gより、
$\mathrm{OE}=2+t$
$\mathrm{OF}=2t-2$
なので、四角形が正方形になるのは
$2+t=2t-2$
のとき。
これを解くと、
$t=4$
で、これは場合分けの$1 \lt t$に含まれている。
なので、$t=4$のときに四角形$\mathrm{EFE}'\mathrm{F}'$は正方形になる。
よって、③は正しい。
以上より、選択肢のうちで正しいのは
①,③
である。
解答ケ:1,3